小川 未明 作 少年と秋の日読み手:村上 晴砂(2015年) |
もう、ひやひやと、身にしむ秋の風が吹いていました。原っぱの草は、ところどころ色づいて、昼間から虫の鳴き声がきかれたのです。
正吉くんは、さっきから、なくしたボールをさがしているのでした。
「不思議だな、ここらへころがってきたんだけど。」
どうしたのか、そのボールは見つかりませんでした。お隣の勇ちゃんは、用事ができて帰ってしまったけれど、彼だけは、まだ、思いきれなかったのでした。 ボールがほしいというよりは、どこへいったものか、消えてなくならないかぎり、このあたりに落ちているものと思ったからです・・・