小川 未明 作 金魚売り読み手:吉江 美也子(2016年) |
たくさんな金魚の子が、おけの中で、あふ、あふとして泳いでいました。体じゅうがすっかり赤いのや、白と赤のまだらのや、頭のさきが、ちょっと黒いの や、いろいろあったのです。それを前と後ろに二つのおけの中にいれて、肩にかついで、おじいさんは、春のさびしい道を歩いていました。
このおじいさんは、これらの金魚を仲買や、卸屋などから買ってきたのではありません。自分で卵から養成したのでありますから、ほんとうに、自分の子供のように、かわいく思っていたのです・・・