夢野 久作 作
読み手:野村 洋二(2016年)
泥棒がケチンボの家へ入ってピストルを見せて、お金を出せと言いました。ケチンボは、
「ただお金を出すのはいやだ。その短銃を売ってくれるなら千円で買おう。お前は私からお金さえ貰えばそんなピストルは要らないだろう」
泥棒は考えておりましたが、とうとうそのピストルを千円でケチンボに売りました。ケチンボは泥棒からピストルを受け取ると、すぐにも泥棒を撃ちそうにしながら、
「さあ、そのお金ばかりでない、ほかで盗んだお金もみんな出せ。出さないと殺してしまうぞ」・・・
Copyright© 一般社団法人 青空朗読. All Rights Reserved.