宮沢 賢治 作 手紙 一読み手:西沢 裕子(2016年) |
むかし、あるところに一疋の竜がすんでいました。
力が非常に強く、かたちも大層恐ろしく、それにはげしい毒をもっていましたので、あらゆるいきものがこの竜に遭えば、弱いものは目に見ただけで気を失って倒れ、強いものでもその毒気にあたってまもなく死んでしまうほどでした。この竜はあるとき、よいこころを起して、これからはもう悪いことをしない、すべてのものをなやまさないと誓いました。
そして静かなところを、求めて林の中に入ってじっと道理を考えていましたがとうとうつかれてねむりました・・・