小川 未明 作 金銀小判読み手:菅野 秀之(2017年) |
独り者の幸作は、家の中に話し相手もなくその日を暮らしていました。北国は十二月にもなると、真っ白に雪が積もります。そのうちに、年の暮れがきまして、そこ、ここの家々では餅をつきはじめました。
隣は地主でありまして、たくさん餅をつきました。幸作は、そのにぎやかな笑い声を聞きますと、どうかして自分も金持ちになりたいものだと空想したのであります。
やがて、わずか日がたつとお正月になりました。けれど独り者の幸作のところへは、あまりたずねてくる客もなかったのです。結局そのほうが気楽なものですから、幸作は、こたつに入って寝ていました・・・