岡本 かの子 作 家庭愛増進術 ――型でなしに読み手:宮崎 文子(2017年) |
わたくしは自分達を夫とか妻とか考えません。
同棲する親愛なそして相憐れむべき人間同志と思って居ます。そして元来が飽き安い人間の本能を征服出来て同棲を続ける者同志の因縁の深さを痛感します。わたくしは因縁こそ実に尊くそれを飽迄も大切にすべきものだと信じて居ります。其処に優しい深切な愛情が当然起るのであります。
わたくしもわたくしの同棲者も元来が或る信念の上に立つと従順な人間になり生活意識や情操が一所に集注するたちと見えます。(それゆえ却ってこの信念を樹立し合わなかった昔はお互いに或る部分が少し散漫な所もありました)・・・