小川 未明 作 海のおばあさん読み手:貝瀬 晶子 (2017年) |
大昔のことでありました。海のおばあさんといって、たいそう気むずかしやで、すこしのことにも腹を立てるおそろしいおばあさんが海の中に住んでいました。だれもあまり近寄りませんでしたから、おばあさんは、さびしかったのです。
ちょうど、そのころ、山に、また山のおばさんといって、やさしいおばさんが住んでいました。だれにでもしんせつで、気にいらないことがあっても、笑っているというふうでしたから、小鳥たちや、空を飛ぶ雲でさえ、おばさんを慕って、
「おばさん、きょうはいいお天気ですが、ご機嫌はいかがですか?」と、いって、寄ってきました。いつも、おばさんは、楽しかったのです・・・