村山 籌子 作 たまごとおつきさま読み手:加納 恵美子(2017年) |
むかし、のはらの一けんやに、にはとりが一羽すんでゐました。そののはらのむかふには、ひくい、きれいな山が三つならんで立つてゐました。
ある、月のいゝばんのこと、そのにはとりが、玉子を一つうみました。そのたまごに、丁度のぼつてきた月が、光りをさしかけましたので、たまごは、それは美くしくて、しんじゆのたまのやうに見えました。
にはとりはうれしくてたまらないので、玉子ばかり見てゐました。けれども、そのうちに、玉子は、だん/\消えていつて、かげばかりになり、おしまひには、そのかげさへも見えなくなつてしまひました・・・