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海野 十三

科学が臍を曲げた話

読み手:宮澤 賢吉(2017年)

科学が臍を曲げた話

著者:海野 十三 読み手:宮澤 賢吉 時間:16分57秒

 みなさん、科学だって、時には気むずかしいことがありますよ。そんなときには、臍を曲げちまいますよ、臍をネ。
 童話みたいですが、昔、オーストリヤの王様が、世界最大のダイヤモンドを所有したいという欲望を持って、持っているだけのダイヤを全部坩堝に入れて融合させようと思ったところが、もともと炭素のかたまりであるダイヤは、忽ち一陣の炭酸瓦斯と変じて、空中に掻き消えたという昔話があります。これも臍まげの一つです。
 この時代、天下を横行した錬金術というのは、頗る大きな目標を持っていました。万物何でも金に変えるというのです。到るところで錬金術師は鞴を吹いたりレトルトを炙ったりしましたが、遂に成功しませんでした・・・

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