小川 未明 作 殿さまの茶わん読み手:貝瀬 晶子(2017年) |
昔、ある国に有名な陶器師がありました。代々陶器を焼いて、その家の品といえば、遠い他国にまで名が響いていたのであります。代々の主人は、山から出る土を吟味いたしました。また、いい絵かきを雇いました。また、たくさんの職人を雇いました。
花びんや、茶わんや、さらや、いろいろのものを造りました。旅人は、その国に入りますと、いずれも、この陶器店をたずねぬほどのものはなかったのです。そして、さっそく、その店にまいりました。
「ああ、なんというりっぱなさらだろう。また、茶わんだろう……。」といって、それを見て感嘆いたしました。
「これを土産に買っていこう。」と、旅人は、いずれも、花びんか、さらか、茶わんを買ってゆくのでありました・・・