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宮沢 賢治

さるのこしかけ

読み手:池田 佐季(2017年)

さるのこしかけ

著者:宮沢 賢治 読み手:池田 佐季 時間:17分4秒

 楢夫は夕方、裏の大きな栗の木の下に行きました。その幹の、丁度楢夫の目位高い所に、白いきのこが三つできていました。まん中のは大きく、両がわの二つはずっと小さく、そして少し低いのでした。
 楢夫は、じっとそれを眺めて、ひとりごとを言いました。
「ははあ、これがさるのこしかけだ。けれどもこいつへ腰をかけるようなやつなら、すいぶん小さな猿だ。そして、まん中にかけるのがきっと小猿の大将で、両わきにかけるのは、ただの兵隊にちがいない。いくら小猿の大将が威張ったって、僕のにぎりこぶしの位もないのだ。どんな顔をしているか、一ぺん見てやりたいもんだ。」
 そしたら、きのこの上に、ひょっこり三疋の小猿があらわれて腰掛けました・・・

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