石原 純 作 雨粒読み手:菅野 秀之(2018年) |
そろそろさみだれの季節がやって来る。
同じく雨ではあっても、ふしぎに季節や環境によってその感じは非常にちがっている。それで我国では雨にいろいろな名まえがつけられている。春さめ、さみだれ、しぐれ、驟雨、ゆうだち、霧雨、小糠雨、その外にもなおあるであろう。そう云う雨のいろいろな感じのなかには、雨の音がかなりな役目をはたらいている。さみだれの静かに降りそそぐ音とか、ゆうだちの激しくものを撃つ音とか、音もなくひっそりと濡らしてゆく小糠雨とか、みんなそれぞれの趣きをそなえているのである。
ものしずかに雨の音を聞いていると、いろいろな記憶が心のなかによみがえって来るのも、一つのなつかしげな風情である・・・