フィオナ・マクラウド 作 松村 みね子 訳 最後の晩餐読み手:宮崎 文子(2018年) |
ふいと見た夢のように私は幾度もそれを思い出す。私はその思い出の来る心の青い谿そこを幾度となくのぞき見してみる、まばたきにも、虹のひかりにも、その思い出は消えてしまう。それが私の霊の中から来る翼ある栄光であるか、それとも、幼い日に起った事であったか、よく見極めようとして近よる時――それは、昼のなかに没するあけぼのの色のように、朝日に消える星のように、おちる露のように、消えてしまう。
しかし私は忘れることが出来ない。けっして、けっして、青草の静かさが私の眼の上にある時まで、あの夕方を忘れはしない・・・