上村 松園 作 簡潔の美読み手:黒沢 ちゑ子(2018年) |
能楽の幽微で高雅な動作、その装束から来る色彩の動き、重なり、線の曲折、声曲から発する豪壮沈痛な諧律、こんなものが一緒になって、観る人の心を打つのです。
その静かで幽かなうちに強い緊張みのある咽び顫うような微妙さをもつのは能楽唯一の境地で、そこは口で説くことも筆で描くことも容易に許されぬところだと思います。
私はよく松篁と一緒に拝見に参りますが、その演者や舞台面や道具などを写生するために、特に前の方に置いて貰うのですが、つい妙技につりこまれて、筆の方がお留守になることがあります。
いつでも思うことですが、傑作の面をみていますと、そこに作者の魂をしみじみと感ずることです・・・