小酒井 不木 作 体格検査読み手:吉江 美也子(2018年) |
一
「また入学試験で、若い人達は骨身を削っているようですねえ」
客の藤岡さんは、しんみりした口調で言いました。
「実にかわいそうなことです。心身過労の結果、高等学校などでは、折角入学してもすぐ病気になって再び起つことが出来ないものが沢山あるそうです。どうも困った現象です」と、私は答えました。
「思いつめたあまり自殺するものさえあるそうですが、そういうことをきくと、学問そのものが呪わしくなります」と藤岡さんは、極めて真面目な顔をして言いました。
小学校時代の同窓であった藤岡さんは、二十四五年振りに私を訪ねて下さったのですが、ふと、話の序に、入学試験のことに及んだのです・・・