羽仁 もと子 作 最も楽しい事業読み手:宮崎 文子(2019年) |
人の世になによりも楽しいものは仕事である。張り合いのあるものは仕事である。もしも私たちにすることが与えられてなかったら、毎日どんなにつまらないものだろう。
田園の人は、きょう耕した畑に、あすは種子をまこうと思って楽しく眠る。織りかけている機は、あすは終わるであろうと、ある人は待ちのぞむ。市の人は朝はやく起きて店を飾り、またある人々は足を早めて、事務所に工場にいそぐ。緑の畑が麦を産し、涼しい青田が米になる。われらの労作は楽しいものである。
そうしてその楽しい仕事のなかでも、多くの愛らしい赤ん坊が、よい子供に、よいおとなに育ってゆこうとする仕事を、手伝ってやる仕事ほど、楽しい仕事はないだろう・・・