原 民喜 作 二つの頭読み手:池戸 美香(2019年) |
日曜日のことでした、雄二の兄と兄の友達が鶴小屋の前で、鶴をスケッチしていました、雄二はそれを側で眺めながら、ひとりでこんなことを考えました……何んだい、僕だって描けますよ、鶴だって、犬だって、山の絵だって、駅だって、街の絵だって、みんな描けます、僕の眼にちゃんと見えるものなら、それをそのとおり描けばいいんだから、だからなんだって描けますよ、眼に見えないものだって、美しい美しい天国の絵だって、それもそのうち描けますよ
雄二はだんだん素晴らしい気持になっていましたが、ふと何だか心配になりました、ほんとかしら、ほんとに僕は描けるのかしら……ふと、雄二はまだ明日の宿題をやっていないのを思い出しました、急いで家に戻って、机の前にすわりました、めんどくさい計算なので、雄二はすぐにいやになってしまいました・・・