櫻間 中庸 作 ごわごわごむ靴読み手:池戸 美香(2019年) |
山と山との間に小さい川があります。川には、澄みきつた水が流れてゐます。川の底には白くて丸い石が卵のやうに重なり合つてゐて、水が小石にぶつつかつて、こぽり、こぽりと音をたててゐます。
「ぽつちやり」と何だか黒いかたまりが水の中に入つてきました。
ゆら、ゆら、ゆら、
黒いごわごわしたかたまりは川の底までゆきました。
こぽり、こぽり、こぽり。
流れがはやいので、ごわごわは、くるりくるりとお腹を見せたり背中を見せたりこぽりこぽりと流れてゆきました。
大きな石のところで、ごわごわはやつととまりました。
大きな口をあいて水を飮んでゐます。背中は太い紐でしばつてあります・・・