小川 未明 作 アパートで聞いた話読み手:きにぃ(2019年) |
そのおじさんは、いつも考えこんでいるような、やさしい人でした。少年は、その人のへやへいきました。
「なにか、お話をしてくださいませんか。」と、たのみました。
「どんな話かね。」と、おじさんは、聞きました。
「どんな話でもいいのです。」と、少年がいうと、おじさんは、つぎのような話をしてくれたのです。
二、三日まえの新聞にあったが、街の中央へビルディングができるので、地を深くほりさげていると、動物の骨が出てきた。それを学者がしらべて、およそ二万年も前の人間の骨で、まだ若い二十歳前後の女らしいが、たぶん波にただよって、岸に死体がついたものだろう・・・