中野 鈴子 作 一家読み手:水野 礼子(2020年) |
わたしの祖先は代々が百姓であった
八町はなれた五万石の城下町
ゆきとどいた殿様のムチの下で這いまわった
少しのことに重いチョウバツ
百たたきの音が夜気を破った
天保に生まれた祖父はいつも言った
百姓のようなつらい仕事があろうか
味無いもの食って着るものも着ず
銭ものこらん
金づちの川流れだ
わたしの父母は五人の子供を育てた
父母は子供を百姓にさせる気はなかった・・・