寺田 寅彦 作 子規の追憶読み手:福井 一恵(2020年) |
子規の追憶については数年前『ホトトギス』にローマ字文を掲載してもらったことがある。今度これを書くのに参考したいと思って捜したが、その頃の雑誌が手許に見当らない。とにかく同じような事を二度は書きたくないから、前に書かなかったと思うことだけを記すことにする。
一
自然科学に関する話題にも子規はかなりの興味を有って居たように思われる。当時自分は訪問してそういう方面のどんな話をしていたかは思い出せないが、ただ一つ覚えていることがある。ある時颱風の話からそのエネルギーの莫大なこと、それをどうにかして人間に有益なように利用するようにしたいというようなことを話したら、大変にそれを面白がった・・・