村山 籌子 作 うさぎさん と おほかみさん読み手:鈴木 星南(2020年) |
うさぎさんが散歩してゐました。もうなつになりかけでしたから、きれいな花が咲いてゐました。そしていゝ匂(にほ)ひがしてゐました。
一人で歩くのは、うさぎさんには、初めてです。なぜといつて、うさぎさんは小学校の二年生でしたから。一人だつたので、とてもこわかつたのでした。うさぎさんは大変背がひくいでせう。ですから、鼻の先に見えるものは、草と、葉ばかりでしたから、ずつと前や、うしろから、何が出てくるか、ちつともわかりません。
ところが、うしろのはうで、がさがさといふ音がしたのです。うさぎさんは胸の中がひつくりかへるほどびつくりしました。
がさがさいふ音が、とてもひどく、ちかくなりました。そして、うしろをふりむいてみましたら、毛だらけの、目が二つあつて、口の大きなものが、ちらりと見えました・・・