坂口 安吾 作 新人へ読み手:水野 久美子(2020年) |
如何に生くべきか、ということは文学者の問題じゃなくて、人間全体の問題なのである。人間の生き方が当然そうでなければならないから、文学者も亦そうであるだけの話である。
如何に生くべきか、が人間のあたりまえの問題でなくて、特に文学だけの問題のように考えられているところに、日本文学の思想の贋物性、出来損いの専門性、一人ガテンの独尊、文学神聖主義があるのだろう。
罪の自覚、そして孤独の発見は文学のふるさとだけれども、それは又、人間全体の生き方の母胎でもあって、およそ、文学固有の生き方、態度、思想、そういう特別なものは有り得ない・・・