楠山 正雄 作 姨捨山読み手:安岡 ようこ(2020年) |
一
むかし、信濃国に一人の殿様がありました。殿様は大そうおじいさんやおばあさんがきらいで、
「年寄はきたならしいばかりで、国のために何の役にも立たない。」
といって、七十を越した年寄は残らず島流しにしてしまいました。流されて行った島にはろくろく食べるものもありませんし、よしあっても、体の不自由な年寄にはそれを自由に取って食べることができませんでしたから、みんな行くとすぐ死んでしまいました。国中の人は悲しがって、殿様をうらみましたけれど、どうすることもできませんでした。
すると、この信濃国の更科という所に、おかあさんと二人で暮らしている一人のお百姓がありました・・・