江戸川 乱歩 作 火繩銃読み手:田中 淑恵(2020年) |
或年の冬休み、私は友人の林一郎から一通の招待状を受け取った。手紙は、弟の二郎と一緒に一週間ばかり前からこちらに来て、毎日狩猟に日を暮しているが、二人だけでは面白くないから、暇があれば私にも遊びに来ないか、という文面だった。封筒はホテルのもので、A山麓Sホテルと名前が刷ってあった。
永い冬休みをどうして暮そうかと、物憂い毎日をホトホト持て余していた折なので、私にはその招待がとても嬉しく、渡りに船で早速招きに応ずることにした・・・