楠山 正雄 作 文福茶がま読み手:小野 美好(2021年) |
一
むかし、上野国館林に、茂林寺というお寺がありました。このお寺の和尚さんはたいそうお茶の湯がすきで、いろいろとかわったお茶道具を集めてまいにち、それをいじっては楽しみにしていました。
ある日和尚さんは用事があって町へ行った帰りに、一軒の道具屋で、気に入った形の茶がまを見つけました。和尚さんはさっそくそれを買って帰って、自分のお部屋に飾って、
「どうです、なかなかいい茶がまでしょう。」
と、来る人ごとに見せて、じまんしていました。
ある晩和尚さんはいつものとおりお居間に茶がまを飾ったまま、そのそばでうとうと居眠りをしていました。そのうちほんとうにぐっすり、寝込んでしまいました・・・