小川 未明 作 おおかみをだましたおじいさん読み手:中田 真由美(2021年) |
北の国の、寒い晩方のことでありました。
雪がちらちらと降っていました。木の上にも、山の上にも、雪は積もって、あたりは、一面に、真っ白でありました。
おじいさんは、ちょうど、その日の昼時分でありました。山に、息子がいって、炭を焼いていますので、そこへ、米や、芋を持っていってやろうと思いました。
「もう、なくなる時分だのに、なぜ家へもどってこないものか、山の小屋の中で病気でもしているのではなかろうか。」といって、おじいさんは、心配をいたしました。
「どれ、雪がすこし小やみになったから、俺が持っていってやろう。」といって、おじいさんは村から出かけたのでありました・・・