グリム 作 矢崎 源九郎 訳 マリアの子ども読み手:堀邊 絵梨子(2021年) |
ある大きな森のまえに、ひとりの木こりが、おかみさんといっしょに住んでいました。子どもは、三つになる女の子がたったひとりしかありませんでした。
木こり夫婦はたいへん貧乏で、その日その日のパンもなく、子どもになにを食べさせたらよいか、とほうにくれるほどでした。
ある朝、木こりは心配ごとに胸をいためながら、森へしごとにでかけました。木こりが森のなかで木を切っていますと、ふいに、背の高い美しい女の人が目のまえにあらわれました。みれば、女の人はぴかぴかかがやく星のかんむりを頭にいただいています。女の人は、木こりにむかっていいました。
「あたしは聖母マリア、幼子キリストの母です。おまえは貧乏で、その日のものにもこまっていますね・・・