小川 未明 作 かざぐるま読み手:中田 真由美(2021年) |
駅前の広場で、二人の女はとなりあって、その日の新聞を、ゆき来の人に売っていました。一人は、もう年をとった母親であったが、一人は、まだ若い、赤ん坊をおぶった女でありました。
朝のうちは、電車のつくたび、乗り降りするものがはげしいので、新聞もよく売れたが、正午近くなると、買うものが、あまりなかったのです。
冬の日は、広場の土を白々とてらしていました。ただ、紙くずが、風にふかれて、その上をとんでいます。二人は、なにを考えているのか、ぼんやりと、前の方をながめていました。
すぐ向こう筋に中華料理店があって、さっきから、入り口のドアが、あいたり、しまったりしていました・・・