小川 未明 作 道の上で見た話読み手:齋藤 こまり(2022年) |
いつものようにぼくは坂下の露店で番をしていました。
このごろ、絵をかいてみたいという気がおこったので、こうしている間も、物と物との関係や、光線と色彩などを、注意するようになりました。また坂の上方の空が、地上へひくくたれさがって、ここからは、その先にある町や、木立などいっさいの風景をかくして、たとえば、あの先は海だといえば、そうも思えるように、いくらも空想の余地あるおもしろみが、だんだんわかってきました。
その日は、からっとよく晴れていました。ただおりおり風が、砂ぼこりをあげて、おそいかかるので、気持ちがおちつかなかったけれど、毎年、夏のはじめには、よくある現象でした・・・