田中 貢太郎 作 火傷した神様読み手:齊藤 雅美(2022年) |
一
天津神国津神、山之神海之神、木之神草之神、ありとあらゆる神がみが、人間の間に姿を見せていたころのことであった。
その時伊豆国に、土地の人から来宮様と崇められている神様があった。
伝説にもその神様がどんな風采をしていたと云うことがないから、それははっきり判らないが、ひどく酒が好きであったと云うところからおして、体が大きくてでっぷりと肥り、顔は顔で赧く、それで頬の肉がたるみ、そして、二つの眼は如何にも柔和で、すこしの濁気のない無邪気な光を湛えていたように思われる・・・