土田 耕平 作 柿読み手:川村 ゆかり(2022年) |
私の村は「柿の木の村」でした。家といふ家のまはりには、大きな小さな柿の木が、立ち並んでゐました。
夏は、村ぢゆうが深い青葉につゝまれ、秋はあざやかな紅葉に染りました。紅葉がちつてうつくしく色づいた実が、玉をつづつてゐるのを見るのは、どんなにたのしかつたでせう。
私の家の庭には、大きな柿の木が幾本もありましたので、家内だけで食べつくすわけにはいきません。山浦のお百姓さんが、稲のとりいれがすんだ時分に、馬をひいて、買ひにきました。
「こんちは、今年もきたぜ。」
山浦のお百姓さんは、ふとい声で、あいさつして、庭の柴戸口から入つてきました。
「どう/\。」・・・