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海野 十三

生きている腸

読み手:二宮 正博(2022年)

生きている腸

著者:海野 十三 読み手:二宮 正博 時間:43分5秒

   妙な医学生

 医学生吹矢隆二は、その日も朝から、腸のことばかり考えていた。
 午後三時の時計がうつと、彼は外出した。
 彼の住んでいる家というのは高架線のアーチの下を、家らしい恰好にしただけの、すこぶる風変りな住宅だった。
 そういう風変りな家に住んでいる彼吹矢隆二という人物が、またすこぶる風変りな医学生であって、助手でもないくせに、大学医科にもう七年も在学しているという日本に一人とあって二人とない長期医学生であった。
 そういうことになるのも、元来彼が課目制の学科試験を、気に入った分だけ受けることにし、決して欲ばらないということをモットーにしているのによる。されば入学以来七年もかかっているのに、まだ不合格の課目が五つほど残っていた・・・

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